• 芳春と遠雷とやみ
  • つぶしたはずの遼遠
  • 黄昏れにしたたる色彩
  • 戯れにあそぶ暮春はかなたへ
  • 誰かのためだとやさしく抱いて
  • あえかなる星はやがて天蓋を覆う
  • 夜明けがくるまで嘘をわけあう
  • かなしい春光を手放すための
  • 滲んで届いた常春の聲
  • 貴方がほどけた春情
  • 春告げのまろうど

ちいさく囁きあった春の光のなか。

きみが佇んだ場所の花たちは、水に溶けて消えたので、

ここに留めておけない、その心のようだった。


2023 spring